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音楽や楽器の新しい定義を見つける。ドレイク・ミュージックの実践 - CINRA.NET(シンラドットネット)

障害のある人にとって本当の障壁は何か? テクノロジストとの出会い

『東京オリンピック・パラリンピック』を契機に、英国チームのホストタウンとして同国との交流を進めている川崎市。市では、誰もが暮らしやすいまち作りに向けた運動「かわさきパラムーブメント」の一環として、昨年からアート団体ドレイク・ミュージックを招聘し、トレーニングや、ワークショップなどを開催している。

ドレイク・ミュージックとは、障害のあるなしにかかわらず全ての人が音楽を楽しむための多様なプログラムを展開している英国のアート団体だ。障害のある人に向けた、利用しやすい音楽サービスを提供するほか、障害のある人がより容易にアクセスできる音楽プログラムを実施する人材を育成するためのトレーニングを実施している。また、音楽家や企業関係者、エンジニア、デザイナーがアイデアを交換し合う場を積極的に作っており、その取り組みには世界中から注目が集まっている。

左から:ベン・セラーズ(アソシエイト・ミュージシャン)、ティム・イエイツ(R&Dプログラム・リーダー)、ダレル・ビートン(アーティスティック・プログラム・リーダー)
左から:ベン・セラーズ(アソシエイト・ミュージシャン)、ティム・イエイツ(R&Dプログラム・リーダー)、ダレル・ビートン(アーティスティック・プログラム・リーダー)

そんなドレイク・ミュージックの代表的な取り組みの1つが、テクノロジーを駆使したアクセシブル(近づきやすさやアクセスのしやすさ、利用しやすさなどの意味)な楽器開発である。中でも有名なのは、障害のある音楽家ジョン・ケリーと共に開発したギター「ケリー・キャスター」だ。ティム・イエイツがこの楽器について説明してくれた。

ティム:ジョンは、自分がどう演奏したいかというビジョンを明確に持っていました。そこで我々ドレイク・ミュージックは、テクノロジストを集めてハッカソンを開催し、名乗りを挙げた2人のメンバーと共にプロジェクトに関わることになりました。

ティム・イエイツ
ティム・イエイツ

まだあまり耳馴染みのない言葉かもしれない「テクノロジスト」とは、「知識に裏付けられた技能を使いこなす人」を指す。技術者と職人の中間に位置するような存在のことだ。

ジョンは握力が弱く、ギターの弦を押さえることができなかった。そのため、まずはエレキギターを切断し、ジョンの体に合う形を作るところから作業は始まった。

アクセシブルなギター「ケリー・キャスター」開発の様子 / © Emile Holba
アクセシブルなギター「ケリー・キャスター」開発の様子 / © Emile Holba

パンクミュージシャンであるジョンから出された「見た目もパンクっぽくして欲しい」というリクエストも取り入れ、実に3年の開発期間を経て「ケリー・キャスター」は完成した。ジョンの手の動きを感知したマイコンボードが、PCの音楽ソフトに信号を送り音を出す仕組みだ。楽器は現在も変わらず愛用され、彼のライブステージで大活躍しているという。

「ケリー・キャスター」開発の様子。障害のある音楽家、ジョン・ケリーとともに開発を進める / © Emile Holba
「ケリー・キャスター」開発の様子。障害のある音楽家、ジョン・ケリーとともに開発を進める / © Emile Holba

ドレイク・ミュージックで、アーティスティック・プログラム・リーダーとして活動するダレル・ビートンは「楽器を大量生産し利益を出すことが、活動の目的ではない」と言う。

ダレル:我々の目的は、障害がありつつも「音楽をやりたい」という強い意志を持つ方が「障壁」だと感じているものを取り除くことです。ジョンと3年も一緒に取り組んでいるのは、傍目には非効率に感じるかもしれません。でも、彼との作業で見えてきたことは、その経験が他のサポートケースにも応用できるということでした。

ダレル・ビートン
ダレル・ビートン

そうしたサポートのデータは全て『ドレイク・ミュージック・ラボ』に集積される。ハッカーやテクノロジスト、楽器メーカーが一丸となり、障害のあるミュージシャンのニーズに応える新しい楽器開発や既存楽器のカスタマイズを模索しているという。

ティム:ロンドンとマンチェスターで定期的に開催されている『ドレイク・ミュージック・ラボ』は、テクノロジストと障害のある音楽家が出会う場です。コミュニティーを作り、メンバーの関係を構築することによって、新しい楽器開発もスムーズに進んでいきます。

障害のある人にとって何が本当の障壁となっているのか? それを取り外すためには何が必要なのか? この2つの問いは音楽家とテクノロジスト、双方にとってのチャレンジであり、またそれが互いの恩恵にもなっているところがポイントだと思います。

ドレイク・ミュージック・ラボでの様子。障害のある音楽家が主導して、ハッカー、テクノロジスト、楽器メーカーと一緒に、新しい楽器開発や既存の楽器のカスタマイズを進めている / © Emile Holba
ドレイク・ミュージック・ラボでの様子。障害のある音楽家が主導して、ハッカー、テクノロジスト、楽器メーカーと一緒に、新しい楽器開発や既存の楽器のカスタマイズを進めている / © Emile Holba

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February 06, 2020 at 04:01PM
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