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「生きていくことを肯定する音楽を」――米津玄師の変化、そして曲に託す希望 - Yahoo!ニュース

「こういう未曽有のできごとが起こったとたんに、届けることすらできなくなってしまう。弱々しい存在だなと思うし、恥ずかしいという気持ちもあります」。「Lemon」や「パプリカ」など多くのヒット曲を送り出してきた米津玄師にとっても、コロナ禍は音楽家としての自身を省みる機会となった。自粛の間、黙々と制作に打ち込んだアルバムは、発売日を前に100万枚を出荷。この数カ月で考えたこと、楽曲に込めた思いとは。(取材・文:長瀬千雅/撮影:堀越照雄/Yahoo!ニュース 特集編集部)

(文中敬称略)

余暇をつくらず、音楽制作に没頭した

2月1日にスタートしたツアーは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日程の半分もいかないうちに続けられなくなった。それからの数カ月、米津は制作に没頭した。

外に出られないとなったときに、音楽だけに集中しよう、音楽をつくることに完全に埋没しようと決めたんです。最初にそう決めたから、悩まなくていい。一つのことに意識を集中してたら、それだけを考えればいいから。ぐだぐだと悩むのって暇があるときだから、自らすすんで余暇をつくらないようにしていたところもあります。

(一人で家で作業するというのは)自分の性には合っているなと思いましたね。一人で家にこもって延々と作業をすることが苦ではない人間なので、自粛そのものに対して「苦しかった」という記憶はあまりないです。

もしコロナ禍がなかったら——。ツアーを完走したのはもちろん、センバツ高校野球の入場行進で「パプリカ」が演奏されていた。いまごろは、オリンピック・パラリンピック開催に合わせて「NHK2020ソング」として嵐のために書き下ろした曲「カイト」が、頻繁に流れていただろう。

なくなってしまったものを数えてもしようがない。いま自分にできることは何かをひたすら考えていくほうが精神的にも楽です。

不要不急という言葉を耳にたこができるぐらい聞いたと思うんですけど、人間にとっての必要最小限を突きつめると、音楽家は真っ先に切り離されるものだと思うんですよね。現にライブができなくなって、ライブ活動を主な生活の糧としていた人間は生きていけなくなっています。それは、マイルドに表現されてはいるけれども、あなたたちは要らないんだと突き付けられるに等しい。

自分のつくった音楽が誰かの生きる糧になる、そういう役割はあるかもしれない。けれども、こういう未曽有のできごとが起こったとたんに、届けることすらできなくなってしまう。弱々しい存在だなと思うし、恥ずかしいという気持ちもあります。

(新型コロナウイルス感染症と)最前線で戦っているのは医療従事者で、その人たちがいる場所を想像すると、ものすごいものがあると思う。あるいは、全体のためには外出自粛などの対策が必要だけれど、それによって生じた混乱に巻き込まれて、生活が目に見えて困難になっている人もいます。そこにはある種の地獄というか、逃れがたい理不尽さがある。この状況に対して、何か音楽家としてやるべきことがあるんじゃないか、あるとすればどういう形なのか。それを考えていたんですよね。

無観客ライブを配信するとか、もっと直接的に寄付をするとか、各々の形があると思ったんですけど、自分のこれまでの人生に照らし合わせて考えたら、やっぱりそれは、音楽をつくることで。混乱した状況だからこそ、この世の中で生きていくことを肯定するような音楽をつくりたいと思いました。

変わっていくことを認める重要さ

「生きていくことを肯定する」とはどういうことか。「やっぱり、誰かを愛し、愛されながら生きていくことだと思う」と話す。その思いを形にした曲が、今月リリースされた新アルバム『STRAY SHEEP』に収められている「カナリヤ」だ。

このご時世だから、悲観的になるのは簡単で、怒りや悲しみにのまれようとすれば、すぐさまのまれてしまう。そうならないように、希望をもって生きていくことを提示したかった。

例えば自粛警察という言葉が生まれましたよね。感染症が世界的に流行して、自分の選択や行動が誰かの死にかかわってしまうかもしれないことにうろたえているけれど、そのリスクはいまに始まったことじゃない。そもそも私たちの生活は、まわりまわって誰かの死の上に成り立っているのであって。

誰しも見て見ぬふりをしながら生きているんですよね。それは別に悪いことではないと思うんです。何もかも正しい選択をとりながら生きるのは原理的に不可能だと思うので。だけど、自粛をしない人間は悪だ、悪を見すごす人間すら許せないという潔癖を目の当たりにしたときに、自分はそういうスタンスはとりたくないなと思いましたね。

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August 05, 2020 at 09:04AM
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