新型コロナウイルスの感染拡大で休業を余儀なくされている京都市内のライブハウスが、苦境を乗り切るために模索している。2月に大阪のライブハウスでクラスター(感染者集団)が発生し、営業自粛が長期に及ぶ中、課金制のライブ配信やインターネット上のクラウドファンディング(CF)による資金調達などで急場をしのいでいる。「音楽文化の拠点を守りたい」。ファンの支援が広がる一方で、閉店に追い込まれる例も出てきた。存続に向けて関係者の不安は消えていない。
14日夜。ライブハウス「拾得(じっとく)」(上京区)で、ミュージシャン吉田省念さん(40)が毎月行うライブ「黄金の館」がネットの動画アプリで生配信された。「拾得」では初の試み。「来月はいつもの形でできることを願って…」。弾き語りの合間、吉田さんが思いを語った。
1973年に古い酒蔵を改装して開店した「拾得」は翌年開業の「磔磔(たくたく)」(下京区)と共に京都の音楽文化をけん引してきたが、ライブのキャンセルが相次ぎ、今月から休業に入った。家賃や人件費の負担がのしかかる。「大切なハコを守りたい」。投げ銭方式での中継を吉田さんが企画した。収益の一部が「拾得」に提供される。オーナーの寺田国敏さん(71)は「何とか存続するために試行錯誤の段階」と話す。
「もう降参という感じ」。数々の有名ミュージシャンが出演する「ライブスポットラグ」(中京区)の秋葉隆店長(54)は嘆く。3月中旬からライブの中止が続き、実質営業できたのは半分ほど。さらに今月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令されたのを受け、当面の休業に踏み切った。「今月は売り上げがゼロに等しい」が、カメラ機材を増やしてライブの生配信に活路を探る。「やっぱり良い音楽を届けたいですから」
今月で開業30年を迎えた「クラブ メトロ」(左京区)はCFで資金協力を呼び掛けている。初期にはバンド「くるり」や歌手のJUJUさんといったミュージシャンが出演した空間。「窮地を救おう」とミュージシャンの大友良英さんらが応援コメントを寄せ、目標金額の3倍以上に当たる1200万円超が集まっている。プロデューサーの林薫さん(50)は「予想以上の反響」と感謝する一方、事態の収束は見通せず、「どこまで持ちこたえられるか」とこぼす。
物販に力を入れるライブハウスもある。イベントを自粛している「GROWLY(グローリー)」(中京区)は、3月半ばから期間限定でTシャツなどを販売し、計250枚近く売れているという。角田恭平代表(35)は「小さなライブハウスはもともと自転車操業の店が多い。事態が落ち着いても、さまざまな事業展開を考えていく必要がある」と話す。
ダンスパフォーマンスなど多彩なイベントも展開する「UrBANGUILD(アバンギルド)」(中京区)は、今月から料理のテークアウトのみで営業を続けている。また過去の催しの手拭いを活用してオリジナルマスクを作り、6日から1個500円で販売を始めたところ、ツイッターなどで反響を呼び、注文が相次いでいるという。「音楽やパフォーマンスを直接届けられない時だからこそできることを探りたい」。ブッキングマネジャーの須藤亮太郎さん(47)はそう強調する。
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April 21, 2020 at 09:03AM
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苦境ライブハウス、存続へ試行錯誤 課金制配信やクラファン 「音楽文化守りたい」 - 京都新聞
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