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音楽サブスクの2トップ、SpotifyとApple Musicのレコメンドシステムはどう違う? - ITmedia

 欧米に続き、日本でもサブスクリプションサービスが、音楽ビジネスの中で一定の地位を築き始めている。それは、サザンオールスターズ、中島みゆき、井上陽水、松任谷(荒井)由実といった大物アーティストが続々と音楽サブスクに参入していることでもうかがい知れる。

 リスナーの立場からすると、幸せな時代の到来だ。一方、楽曲を提供するレーベルにとっても、サブスクは、キャッシュフローの安定化をもたらしてくれる。わずか2000曲強の楽曲を提供しているにすぎない筆者のレーベルにおいてすら、サブスクからの売上は、多少の凸凹は見られるものの、比較的安定的に推移している。過去の音源も含め、数百万曲、数千万曲を取り扱っている大手レーベルであれば、サブスクからのキャッシュフローの安定化効果は、かなりのものになるのではないだろうか。

 ただ、手放しで喜べないポイントもある。レーベル側からすると、自分たちの音楽がどのような形でピックアップされ、再生リストに登場しているのかがブラックボックスと化しており、どうにも釈然としない部分があるのだ。

 特に、筆者が運営するような弱小レーベルの場合は、プラットフォームと直接コンタクトすることはできず、アグリゲーターと呼ばれる一種の取次代理店を通じての提供となるので、情報として降りてくるのは「何がいつ何回ストリーミング再生された」という売上結果としてのデータだけだ。ただ、プラットフォームと直接やりとりを行っている大手レーベルが、それ以上のデータをプラットフォーム側と共有しているのかどうかは、部外者である筆者は知る由もない。

iTunes Storeでの売上実績がApple Musicでの再生数を決める?

 音楽サブスクの売上データにおいて興味深いデータがある。下図は、筆者のレーベルの過去24カ月における四半期ごとのプラットフォーム別の売上グラフだ。驚いたことに、Apple MusicとiTunes Storeが突出している。その一方でグローバル市場において、Apple Musicとサブスクを二分するSpotifyの売上が異様に少ないのが分かる。この非対称性の要因はどこにあるのか、あくまでも筆者の推測の範囲であるが、以下に考察してみた。

photo 2018年と19年の四半期ごとの各プラットフォームの売上比較グラフ。Apple MusicとiTunes Storeが突出している

 考察の前に、まず、ご留意いただきたいことがある。前述の通り、筆者のレーベルでは、2000曲強の楽曲を各プラットフォーム共通に配信している。大手レーベルが数百万曲、数千万曲を取り扱っているのと比較すると、誤差の範囲内ともいえるカタログ数である。従って、上記のグラフや以下の考察がサブスク全体を示す普遍的な話ではないことは忘れないでいただきたい。

 それにしても、世界を二分するApple MusicとSpotifyで、なぜこれだけの開きが発生するのか。まず考えられるのが、両プラットフォーム間でのレコメンドやプレイリストでの選曲の仕組みの違いであろう。Apple Musicの場合、iTunes Store(iTunes Match含む)での販売実績が、レコメンドに大きく影響するとにらんでいる。

 筆者のレーベルでは、クラシック、ワールドミュージック系、宮崎アニメ楽曲のカバーといった、瞬発力には乏しいが、長い時間軸の中で、比較的堅実に聴かれる楽曲を中心に配信している。そのような中の一部に、iTunes Storeのクラシックやワールドのチャートにランクインするアルバムがある。実はそのようなアルバムに収録された楽曲は、Apple Musicのストリーミング数も伸びている。iTunes Storeでの販売実績がApple Musicのレコメンドやプレイリスト作成に影響する仕組みになっているのだ。

選曲システムを磨き上げてきたSpotify

 これは筆者の完全な推測だが、Appleからすると「iTunes Storeの販売実績」という格好のデータをApple Musicのレコメンドに利用しない手はない、といったところではないだろうか。さらに邪推すると、Beats Musicを買収し、そのシステムの延長線上に構築したApple Musicだけに、システムによるレコメンドの仕組みがSpotifyに比較して脆弱なのではないかと疑っている。

 というのはBeats Musicは、当初100%人力によるプレイリスト作成を行っていたからだ。サービス開始から5年近く経過するApple Musicだけに、当然ながら、なんらかの形でシステム化は進めてはいるだろうが、それでもいまだに、iTunes Storeの実績と連動してストリーミング数が多いという事実を無視するわけにはいかない。

 ちなみに、Appleは、2018年9月に音楽認識アプリのShazamを買収している。当然ながら、現在では、Shazamから得られるデータをレコメンドやプレイリスト作成に反映させているであろう。

 その一方で、サービス開始当初から、ストリーミング一択で勝負するSpotifyの場合、良質なレコメンドやプレイリストの提供がサービスの魅力向上に直結するだけに、選曲システムを磨き上げてきた経緯がある。筆者のレーベルにおいて、Spotifyの売上が低いのは、iTunes Storeのランキング実績のような外部要因が加味されないため、Spotifyのシステムが選曲してくれない、という単純な理由によるものと思われる。

photo SpotifyのHome画面でレコメンドされる楽曲はシステムが選曲している

 そこで気になるのが、Spotifyのレコメンドは、どのような仕組みで行われているのか、という疑問である。例えば、モバイルアプリやパソコン用クライアントのHome画面に表示される楽曲やアルバムは、各ユーザーの好みに合わせて高度にパーソナライズされている。これは、「Bandits for Recommendations as Treatments」と呼ばれるシステムが、過去の履歴をもとに、選曲している。

 ただ、履歴といっても、単純な再生履歴をとったものではなく、再生時間、スキップ、プレイリスト作成時の選曲、位置情報、SNSへの共有といったものを学習して選曲しているという。ちなみに、SpotifyやApple Musicでは、30秒間再生されて初めて、1ストリーミングとカウントされる。

 Spotifyでは、このようなシステムによる選曲だけでなく、人的パワーによるタグ付けも実施し、いわゆるハイブリッド方式を採用しているという。そのタグは1000項目にも登るそうで、「元気が出る」「二日酔いに効く」「桜の季節に」などのリスナーのシチュエーションに合致したプレイリストを作成する際に威力を発揮しているようだ。

 ただ、これらは、ネット上から拾ったSpotifyのレコメンドシステムに関する記述や、関係者への聞き取りなど、情報の断片を筆者がつなぎ合わせて推測し、考察した結果であることはご留意願いたい。

音楽を4138種にジャンル分け

 Spotifyのレコメンドシステムの一端を垣間見ることができるサイトをご紹介する。「Every Noise at Once」は、Spotifyが4138種にジャンル分けしたデータを基に、各ジャンルにおける特徴を位置関係で可視化した散布図だ。

photo ジャンル名をクリックすると楽曲を30秒間試聴できる。さらに、ジャンル名右側の「>>」をクリックすることでそれに属するアーティスト名が表示され楽曲を試聴可能

 ページの上部に位置するほど、機械的な音楽、つまり、テクノ、ハウス、EDMのような打ち込み系の音楽ジャンルを示し、ページの下部に行くほど、音声系を含むアコースティックな音楽(古い声楽、地域の伝統音楽、クラシック音楽など)が分布している(サイト説明の原文では「organic」と表現)。

 中でも興味深いのは、上部メニューから「cities」をクリックすると各都市で聴かれている音楽を選曲したプレイリストが表示される。説明文には「playlists charting the songs」とあるので、ストリーミング数に基づいたランキング表示なのであろう。例えば、「Okinawa」のランキングを見ると、他都市と比較して沖縄出身や地元をベースに活動しているアーティストの楽曲が目立つ。沖縄在住のリスナーには、やはり沖縄系の楽曲が積極的にレコメンドされるのであろうか。

 これはあくまでもシステムの片鱗(りん)を垣間見ているにすぎないが、Spotifyが楽曲に関するメタデータを詳細に分類するシステムを構築していることが見て取れる。

 筆者が、SpotifyとApple Musicを日々利用している上での印象において、Spotifyの方が、好みに合致した未知の音楽を的確にレコメンドしてくれるという感覚はある。レコメンドの品質に関しては、属人的な要素が強く、個々のユーザーにより満足度は異なるので、あくまでも筆者の感想ということは申し添えておく。

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April 02, 2020 at 04:40AM
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