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ウルトラマンシリーズの名曲とフランス映画の意外な関係 作曲家・冬木透に聞くシリーズ劇伴音楽の秘話 - 時事通信ニュース

2019年12月07日12時00分

自宅の居間にはウルトラセブンの怪獣がずらり。「一番好きなヒーローもセブン。浮気すると怒られちゃうから」と言う冬木透=東京都内の自宅

自宅の居間にはウルトラセブンの怪獣がずらり。「一番好きなヒーローもセブン。浮気すると怒られちゃうから」と言う冬木透=東京都内の自宅

 大作映画「シン・ウルトラマン」(2021年公開予定)の製作や、米マーベルコミックスとの提携など、誕生以来50年以上がたつ今も話題を集める特撮ヒーロー、ウルトラマン。長年にわたるシリーズの魅力の一つが、ドラマや戦闘シーンを盛り上げる劇伴音楽(BGM)だ。

 「ウルトラセブン」をはじめ、昭和時代に放送されたシリーズの大半に関わった作曲家の冬木透はその最大の貢献者と言えるだろう。その音楽は交響曲化されて本格的な演奏会も開かれるなど、テレビ番組の枠を超えて今も親しまれている。今年は、シリーズ作品を中心に過去の業績を網羅した10枚組のCDボックスもリリースされ、「われながらこんなにやってきたのかとびっくりした」と愉快そうに語る。

 現在84歳の冬木は旧満州(中国東北部)の生まれで、戦後、広島県に移り住んだ。地元のエリザベト短期大学の宗教音楽専攻科を修了後にラジオ東京(現在のTBS)に入社。音響科で働きながら、国立音楽大学で作曲を学び、テレビドラマ「鞍馬天狗」の音楽などを担当した後、作曲家として独り立ちした。

 ウルトラシリーズとの出合いは1967年の「ウルトラセブン」だった。番組の監修を務めた円谷プロダクションの円谷英二特技(特撮)監督の長男で、TBSの同僚だった一(はじめ)氏から依頼を受け、主題歌と劇中音楽を作曲した。

 冬木によると、一氏のリクエストは「宇宙的なサウンド」だった。当時、宇宙を題材にした音楽はほとんどなく、唯一、ホルストの組曲「惑星」のみが参考になったと振り返る。流行し始めていたシンセサイザーはあえて使わず、管楽器や打楽器といった「人間的な響きのする音源を使った」という。

 放送当時はあくまでドラマ用の音楽という位置づけにすぎなかった。だが、映画「スター・ウォーズ」のヒットなどを背景にした1970年代後半のSFブームの中で再評価の機運が高まり、79年にメイン曲を組曲化した「交響詩ウルトラセブン」を発表。併せて、放送当時の音源を集めたサントラアルバムも発売された。

「自分の作った曲がバラエティーなどで意外な形で使われているのを見るとびっくりします」と話す冬木透=東京都内の自宅

「自分の作った曲がバラエティーなどで意外な形で使われているのを見るとびっくりします」と話す冬木透=東京都内の自宅

 自身の代名詞とも言える作品だけに、思い入れは強い。「街を歩いている子供が『セブン、セブン』と歌っているのを見ると、うれしくなってしまって」。自宅の居間には、ウルトラセブンと「怪獣では一番のお気に入り」というエレキングなどのフィギュアが今も鎮座している。

◇企画書で想像を膨らませて曲を書いた

 「ウルトラセブン」後は、「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA(エース)」などのシリーズ作品に加え、円谷プロの他の特撮ヒーロー番組の劇中音楽も担当した。冷徹なインベーダーとの戦いを描く「ミラーマン」ではクールなタッチ、太古の恐竜が大暴れする「ファイヤーマン」では重量感のあるサウンドを前面に打ち出すなど、作品世界に合致した音楽で作品を盛り上げた。

 作品世界とのマッチングは緻密な打ち合わせゆえと言えそうだが、冬木によると、作曲前に参考にできたのは番組の企画書のみだったという。「絵もスケッチみたいなものしか見せてもらえない。後はプロデューサーや監督にその番組への抱負を聞いて、想像を膨らませながら書いていく。作曲のための材料が少ないのが一番苦しかった」

 冬木が手掛けた曲で有名なものの一つに、印象的な男性コーラスによる防衛隊の攻撃シーンの音楽がある。「帰ってきたウルトラマン」以来、繰り返し採用され、コーラスのフレーズから「ワンダバ」とも呼ばれるBGMで、バラエティー番組やワイドショーなどで使われることも多い。

 実はこのBGMは、日本でもヒットしたフランス映画「男と女」(1966年公開、音楽フランシス・レイ)の主題曲で使われた「シャバダバダ」をヒントにしたという。甘い愛のテーマで使われた手法を、怪獣物の戦闘シーンに応用してシリーズを代表する名曲に仕上げる。その発想はさすがの一言だ。

「ウルトラ・マエストロ 冬木透 音楽選集」

「ウルトラ・マエストロ 冬木透 音楽選集」

 特撮作品以外にも、「太陽の牙ダグラム」「ザ・ウルトラマン」のようなアニメーション作品や、時代劇(「銭形平次捕物控」)、一般ドラマ(NHK連続テレビ小説「鳩子の海」やTBSの「ただいま11人」)、映画(実相寺昭雄監督「曼陀羅(まんだら)」)、コマーシャル、純音楽まで手掛けたジャンルは幅広い。

 冬木によると、ジャンルによって曲のテイストは異なってくる。ファンタジー性の高い作品は「未知の世界や視聴者が初めて目撃する新しい世界を意識して作曲する」。同じSF的な作品でも、「アニメに比べて特撮の方がより人間的な表現に近く」なり、SF的な設定よりも登場人物の日常描写が重視される場合は、一般ドラマの音楽の要素も多く取り入れるという。

 今年5月に発売された10枚組アルバム「ウルトラ・マエストロ 冬木透 音楽選集」(日本コロムビア)は作曲家生活60周年記念をうたい、252曲を収録する。大半の音源は冬木が提供した。

 「私の半生のすべてをさらけ出した。どの子も優しく扱っていただけるとありがたい」。放送当時の貴重な音源はもちろん、「映像的なことは斟酌(しんしゃく)せずに、純音楽としてのストーリーを生かしてまとめた」という交響詩も聞き応え十分。本名の蒔田尚昊(まいた・しょうこう)名義で作曲した宗教曲なども収録され、作曲家の多彩な表情に触れることができるだろう。

(時事通信社編集委員・小菅昭彦)

  ◇  ◇

 冬木透(ふゆき・とおる)=1935年3月13日、旧満州(中国東北部)生まれ。テレビドラマを中心に映画やコマーシャルなどの音楽を手掛け、桐朋学園大学教授も務めた。「黙示録による幻想曲」など純音楽の作品も多い。

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