ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
どうもここのところ、やたらと忙しいな。お付き合いのある各出版社や編集社の年末進行の関係かな。さすが師走。
などと思っていたが、今月はよく考えると、ふだんのレギュラー仕事に加え、中央線沿いに点在しているクラフトビールのブルワリーをひとりで8軒取材してまわる仕事、それと、千葉県の5つのスポットで飲み歩く仕事を受けてしまっていて、それをなんとかかんとか、現在進行形で進めている最中であることを思い出した。
かなりスムーズにいったとしても、ぜんぶで最低、丸7日間くらいはかかるだろう。今年の12月の平日はぜんぶで22日。最終週はもう年末だということも考えると、いつもの原稿仕事に使える日数が異様に少ない。そりゃあ忙しいわけだ。
というわけでこの日も、昼から断続的にクラフトビールを飲み続け、最後の取材が終わったのが20時過ぎ。ビールばかり飲んでまともに食事をしていないから、何か食べて帰りたい。場所は新宿西口。あ、そういえばこのへん、あの店があったよな。
昨年、「パネンムー」というタイ料理の存在を知り、大好きになった。地元にしばらく前にできたタイ料理屋に初めて入ってみたところ、ランチメニューにそれがあった。パネンムーをざっくり説明すると「豚肉のレッドカレー」。もっと正確には、レッドカレーというより、各種スパイスやタイハーブ、ピーナッツ、そしてたっぷりのココナッツミルクを使った「パネン」というカレーの豚肉入りバージョンなんだけど、まぁ要するに、具材が豚肉の赤いタイカレーという感じだ。
タイカレーといえば鶏肉や海鮮系のイメージがあるから、初めて知った時は、豚肉を使ったものをちょっと珍しく感じた。実際、タイ料理のなかでは、日本ではわりとマイナーな部類に入るよう。ただ、僕の最も愛する肉は豚。パネンムーを初めて食べて以来、僕のいちばん好きなタイ料理はパネンムーになった。
そこでいっとき、都内でパネンムーを提供しているタイ料理屋をWEB検索で探しまくった。先述の地元の店以外で見つかったのが、新宿に2軒と、高田馬場に1軒。さっそく新宿に出かけてゆくも、運悪くどちらも臨時休業。その日は高田馬場の店でパネンムー欲を満たして帰ったんだけど、ずっと新宿の2軒にも行ってみたいと思っていた。つまりさっき「このへんに、あの店があったよな」と思い出したのが、そのうちの1軒というわけだ。
それが「バンコクガーデン」という店。お、今日はやってる。店頭のメニューを確認すると、あるある。パネンムー。迷わず入店。
店内は多くのお客さんでにぎわっていて、店員さんも多い。人気店のようだ。カウンター席につき、仕事ではさんざん飲んできたけど、それとは別のプライベート酒、おつかれ酒を飲みたい。目に止まったのが「バンコクガーデンの(得)Get3 Free1 !!」というメニュー。この日は火曜日だったので、システムはよくわかっていないが、「生」が対象のようだ。そこで店員さんに「これはどういうものですか?」と聞いてみる。すると「生ビールを3杯飲むと、4杯目が無料になります!」とのこと。いやいや、さすがにそれは今日じゃないな......。「パクチーサワー」をお願いします。
あらためてメニュー表を眺めると、かなり品数が豊富で、しかも一品一品にていねいな解説がついている。タイ料理では定番の調味料4種のセット「クルワンポン」の使いかたなどもイラスト入りで説明されている。タイ料理入門にはぴったりな店だな。と、うっかりメニューを熟読してしまって目移りがすごいが、ここはやはり初志貫徹。パネンムーでいこう。
異国情緒あふれるルックスの皿から立ち上る、エスニックな香りたち。ざっくりとスプーンで探ってみると、僕がこれまでの人生で出会ってきたどのパネンムーよりも豚肉の量が多い。まぁ、そもそも僕のパネンムー経験は浅すぎるんだけど。
いざ、そこへ甘い香りのジャスミンライスを浸してぱくりとほおばる。うおー! ココナッツミルクのまったりとした甘み、それからしっかりと強めのしょっぱさと、スパイスの爽快な香り。タイカレーってなんでこうも、どこで食べてもうまいのかな。
ひと口ひと口その美味しさを噛み締めながら食べすすめる。ここのパネンムーは、ごはんに対してカレーや具材が足りなくなるかな? 問題がないのがいい。とにかくカレーも豚肉もたっぷり。その幸せが、最後までずっと続いてくれるのが嬉しすぎる。
僕は辛いものが大好きなので、後半は唐辛子のナンプラー漬け「プリック」も追加。慎重に食べないと痛い目を見る辛味が加わり、これまた最高だ。
途中でパクチーサワーがなくなり、タイ焼酎の「モンシャム」をロックで。日本の焼酎に慣れた身としては新鮮に感じる強いアルコール感が、パネンムーとよく合った。
大満足してごちそうさま。やっぱり好きだな、パネンムー。
僕のパネンムー道はまだ始まったばかりだけど、バンコクガーデンのパネンムーは、あくまで自分のなかで、今のところ暫定1位かもしれない。
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