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YOSHIKIが能楽堂の舞台で語った、KIMONOそして音楽。 - VOGUE JAPAN

Photos: Maciej Kucia Stylist: Yasuhiro Watanabe at W Hair & Makeup: Toshihiro Takaki at Flat

──YOSHIKIさんは、呉服屋のご長男と伺っています。

そうです。子どものとき、父親も母親も僕も普通に着物を着ていたので、着物が特別なものという感覚はなかったです。

──お母様は、着物を召してKISSのコンサートに行かれたこともあったとか。

その頃僕は、父親を亡くしたばっかりで。途方にくれてたときに、KISSの音楽に出会いました。それまで音楽はクラシックしかやっていなかったし、ロックは聴いてもいなかった。いつものようにレコード店に、ベートーベンとかシューベルトのレコードを買いに行って、そこでKISSを見つけ「ええ! 何コレ」って大きな衝撃を受けたんです。で、母に「(コンサートに)連れてって」って頼んだんですね。当時はまだ小学生で。母は、何を見に行くかよくわかってなかったと思うんです。だからいつものように着物を着て、お寿司を持って会場に……ビックリしてました(笑)。

──ランウェイでは、YOSHIKIMONOとともに、YOSHIKIさんの音楽もまた、ショーの大切な部分になっています。通常のコンサートと違って、ショーの音楽では何が大切だと思われますか?

僕はいつも何かをするとき、何が主役かを考えるんです。例えばコンサートに行って、何が主役なのかなと。

今は素晴らしいヴィジュアル、視覚に訴えるものも多く、例えばEDMのコンサートに行くと、音楽を聴いているのかヴィジュアルのショーを見ているのかわからなくなる。でも、基本的に僕のコンサートは、音楽を伝えなきゃいけない、そこがメイン。

同じようにショーに関してはファッションがメインで、音楽はその一線を越えちゃいけない。ただ、モデルさんやヘアメイクなど、ショーにはファッションそのもの以外の要素がたくさん重なっているので、バランスをどこに持っていけばいいのかという部分は凄く悩みました。

ジャケット ¥310,000 パンツ ¥130,000 シャツ ¥120,000 スカーフ ¥90,000 ネックレス ¥45,000(参考価格) ベルト ¥37,000/すべてSAINT LAURENT BY ANTHONY VACCARELLO

──ブランドを立ち上げてから最初のショーを行うまで、約5年の歳月をかけられました。その期間はどんな時間だったのでしょう。

どこに向かうんだろうなって。もともとブランドを立ち上げたときは、ショーをやるのかどうかなんてわかってなかった。京都の老舗着物メーカーの加納氏と出会い話をしているうちに、自然な流れでどんどん話が進んでいったんです。

僕が音楽に最初に触れたときだって、最初から「どこでコンサートをやろう」とか「海外デビューしよう」など考えてはいなかった。音楽が好きで、音楽にどんどん親しんでいって、それでバンドを組んで。その過程でだんだんこうなっていったと思うんです。それと同じで、京都に何度も足を運んで、「こういうのを作ってみようか」って、着物というものにあらためて親しんでいったその流れが、ショーに繋がったということですね。あまりビジネスありきで考えてなかったんですよ。

──最新コレクション(2020S/S)では、伝統的な柄がドレスのようなスタイリングで出てきたり、あるいは『進撃の巨人』が正統的な着物の着こなしに登場したりしました。

今回のショーは、実験的だったんですよね。着物をドレスのように着たり、また、いろんな人種の方が着てもいいんじゃないかっていう定義もしてみました。アメリカン・コミックやアニメーションの柄をあえて取り入れてみたのは──そうですね、まあ賛否両論になるんだろうっていうのを想定した上です。まずは一度僕の今持っているものを一回見せてしまって、皆さんからいろんな意見をいただいた方が、次のステップに行きやすいと思った。自分のアイデアを全部ここに集約した、ある種海外に向けたショーケースでもあったんです。

藍染めを使い、サステナビリティを意識した着物もあるんですが、今後どこまでそれを取り入れられるかは、試行錯誤です。先日、オーストラリアの森林火災の復興支援のための寄付をさせていただいたんですけど(※オーストラリア赤十字とアメリカのレインフォレスト・トラストに、YOSHIKI FOUNDATION AMERICAを通じて万ドル=約1,100万円を寄付)、そういった環境問題への取り組みも含めた上で、僕のこのファッションはどこのポジションでやっていくべきなのかなと今は考えてます。

──やる以上は、やはり完璧を求めて時間もかけられるんですね。

多分僕の悪い癖で。ファッションの完成形は永遠にないと思うので、その完成形にたどり着く前の過程で出していくのがいいのかなって、最近思い始めました。

自分のアイデンティティを確保しながら、手探りできた。

1. YOSHIKIさんイチオシの、箔が圧着された着物。ジオメトリックなシルバーの煌めきに、小紫色の帯揚げが映える。2. アメリカン・コミック「ブラッド・レッド・ドラゴン」がプリントされて。3. コレクションではサステナビリティも意識。藍染めを使った着物も登場した。4. 本来の着物をベアトップドレスのようにスタイリングし、チョーカーとニーハイブーツをコーディネート。Photos: Shoji Fuji/Gorunway.com

──コレクションの中では、どのルックがお好きですか?

自分で「コレだな」っていうのは、やはり着物スタイルだと思ってまして(箔が圧着された着物を指す)。

──このルック、とってもインパクトありました!

インパクトありましたね。

──そしてこのモデルさんに着せている。

彼女は、ほかの(ショーの)話が決まりかけていたんだけど、どうしてもって出てもらったんです。モデルさんに関しては数百人見ました。

──オーディションを!?

はい。日本だけじゃなくてほかの国からも。皆さんからすれば、気の遠くなるような作業をしてました。それがわずか十数分で終わってしまうのだから、ファッション・ショーって凄いなと思います。

──以前、「海外に進出している日本のミュージシャンたちの点と点を繋いで線に、さらに面にして日本の音楽を世界に発信していきたい」とおっしゃっていました。YOSHIKIMONOにもそんな思いを託されていますか?

アメリカに住んで30年近くになるんですが、自分のアイデンティティを確保しながら僕らが通用するのかなって手探りできたんですよね。最近になってやっと、何かかたちにできてきたかなっていうふうに思っています。

同じようにこのファッションも、どこまでヨーロッパの色を出すのか、どこまで日本の色を出すのか、難しいところですね。今も特に、パリの関係者と毎週のように話し合っているんですが、どこまで染まるべきなのか、染まるべきではないのか、いろいろ検討しながらやっています。

美しさとは、嘘じゃないこと。純粋であること。

ファッションの展示において世界でも有数の、ロンドン・ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム。「Kimono: Kyoto to Catwalk」展には、YOSHIKIMONOが初めてショーを行った、2016S/Sコレクションの作品が展示されて(2/29 開幕、現在ミュージアムは臨時休館中)。Photo: Kumi Saito

──パリでの発表も考えていらっしゃる?

将来的にはそういう方向でとは思いますけど、まだなんとも言えないです。やはり、ちょっとずつステップを上がっていくっていう感じなのかなあ。僕って、あまりうまく人生を生ききれない人間なので、いろんな意味で遠回りをしてきている。でもその遠回りも、結果的には正解に繋がっているんじゃないかな。

これからいろいろな実験や試行錯誤を繰り返し、いろんな人たちのアドバイスもあると思う。かといってそれに100%流されることなく、僕は自分の信念を確認しつつ、やっていくのがいいのかな。ファッションも音楽もそうなんだけど、あまり気張ってしまってはいけない。どこかで柔軟性を持ってる、だけど信念も持ってる。ちょっと相反する、矛盾したことを言ってるかもしれないけど、その融合が素敵なんじゃないかと僕は思う。

──YOSHIKIMONOの作品ですが、世界でも指折りのミュージアムで、展示が決まっているそうですね。

はい、ロンドンのヴィクトリア&アルバート・ミュージアムに飾られます。場合によってはパーマネントで(「Kimono: Kyoto to Catwalk」展に出展。現在ミュージアムは臨時休館中)。

──YOSHIKIさんの音楽もKIMONOも、美しいものはそうして受け継がれていく。人々の心にずっと残っていく「美しさ」の正体は何だと思いますか?

やはり、嘘じゃないこと。僕らは人と話をするとき、その人の外見と喋っているわけではなくて、意思疎通は多分その人の内面としている。洋服はsurface──外見を飾るけれど、着飾ることで内面が豊かになる。だから素敵なファッションを纏うことで、皆さんの内面が磨かれればと思う。

やはり、純粋であること。悲しみ、苦しみ、喜びを素直に出すこと。音楽で言えば、それを素直に出すメロディ、それが伝わるメロディ。

そのためには、自分が味わった苦しみや悲しみに向き合ってかたちにしなければならないから、メロディを生む苦しみはとてもあります。本当の気持ちは人の心を打つ。僕はそこを大切にしていきたいと思いますね。

苦しみに向き合うことによって、心が洗われる瞬間もあります。僕、結構涙を流すことが多いんですけど、泣くと心が洗われるなと思って。感情の皮が薄いのかなあ。

──最後に。継続して表現活動することの難しさって何でしょうか。

僕がよく思うのは、"何のためにやっているのか"。言い訳になってしまうんだけど、アルバムを20年以上出していない。音楽業界では普通、アルバムは1年に1枚、2年に1枚、少なくとも3年に1枚出していく。でも、それって誰が決めたんだっていうと、音楽というビジネスが存在するから。ビジネスに組み込まれた芸術というカテゴリーだから。芸術って果たしてそういうものなのか、売れているイコール成功なのか、そこもちょっとわからない。

僕は死ぬ瞬間まで音楽をやっている、その瞬間まで作曲もしている、それは間違いないと思う。もちろん、第一線を継続していくのは至難の業で、時代は常に変化していくし、自分の気持ちだっていろんな波に呑まれていく。そのプレッシャーと自分自身が感じる疑問との境目で、いつも悩んで闘って、ギリギリのところでやっている。何故自分がこれをやっているのか。何のためにやっているのか。

僕はクラシックの作曲家が好きで、この曲はベートーベンがいつの日に書いた曲なんだろう、ラフマニノフやチャイコフスキーがいつ書いた曲なんだろうって考えることが結構あるんです。彼らは30代でいい曲を書いているんですよね。そう考えると、「継続って何なんだろう」と思ったりもしてしまう。

継続だけが力なりとは、僕は思わない。密度のある継続、密度の濃い人生を生きるべきなのじゃないかな。生きる時間は、誰しも限られているのだから。

問い合わせ先/サンローラン クライアントサービス 0120-95-2746

Editor: Junko Hirose

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April 23, 2020 at 06:30PM
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