
松隈:メジャーになってくると、「メジャーに染められる」みたいなことがよくあるじゃないですか。いろんな人や意見が集まってくる中で、アーティストの純度は絶対薄くしたくないっていうのはいまでも思っています。もちろんいい意見は全部取り入れるんですけど、なんか意味わかんない意見とかを全部無視できる環境がすごく大事だなと思って。自分の出したい音を、純度の高いものを、99%くらい自分のイメージでかっこいいものをつくって、残り1%くらい他の人の意見を入れる。
白石:へぇー! 僕も入れたい気持ちはあるんです。でも映画って1本つくるのに結構な労力がかかる……毎日のようになにかが崩れ落ちて……。
松隈:(笑)。だから僕はすごいと思うんです。僕の規模とは予算も、人数も全然違うので。作品の中で、ご自身の個性だったり、らしさだったりはどうやって出すんですか?
白石:僕は松隈さんとは逆で、「自分はなにをつくってもそんなに面白くないよね」って昔から思ってて。ただ、人と違うことをやらないとまず注目してくれないだろうなっていうのはあるので、普段、人が映画にしないようなところだとか――もともと僕はそういうことに興味があるんですけれど――なるべく掘り下げていく。できるだけいろんな人の力を借りて、作品を高めていこうっていう考え方があるんですよね。
松隈:僕も一緒にやってる奴ら……メンバーとか、一緒に歌ってくれるアイドルたちとか、彼らのニュアンスを入れていきたいっていうのはすごくあります。
白石:うんうん、よさを引き上げながらですね。
松隈:はい。そういう感じだとまったく一緒の考え。僕が思う完成形がこれで、これを出せるメンバーを集めようってなると限界が来ちゃうと思うので。逆に自分は芯の部分だけもってて、あとは連れてきた人がどんなプレイするのかとか、どんな歌を歌ってくれるのかとか、いいところを拾っていってつくります。
白石:たとえばボーカルの調子が悪い時とかどうするんですか?
松隈:僕のこだわりは「その日に絶対録る」って決めていること。貧乏性なので(笑)。
白石:僕も俳優さんが調子悪い日とかありますが、その日のうちになんとか撮り終えるっていうのはある。
松隈:一緒ですね。その日のコンディションで最大なものを引き出そうと頑張ります。自分のイメージより、声がガラガラになったらそっちでかっこいいじゃんって方向にもっていったりだとか、「もっとしゃがれた声で歌ってみようよ」とか。歌い手さんに僕のイメージも伝えないし、本人のイメージももたないでって感じで歌わせますね。たとえばBiSHは6人組なので、6人の歌を全部録るんですよ。一般的にアイドルさんは事前に歌割りっていうのを決めて、時間短縮で、サビとか全員でわーって歌って、誰が歌ってるかわかんないじゃないですか。
白石:(笑)
松隈:誰が誰かわからないのは意味がない。
白石:確かに。松隈さんの曲はユニゾン少ないですもんね。ユニゾン、ほぼない。
松隈:そうです。よく「なんでユニゾンしないんですか?」て聞かれるんですけど「ダサいじゃん」って、ただそれだけなんですけど(笑)。だから逆に全員録って、その前後の流れとか、歌詞にどう乗ったか、逆にどう乗っているかをこっちで判断してあげるって感じですね。
白石:なるほど。いろいろ考えるのはプレイヤーのほうがいいだろうという考えなんですね。僕も割とそういうところがあるかもしれないです。映画だと、事前にカット割りを決めたりだとか、本来やるべき作業ってすごくいっぱいあって。映画の世界では、すべて事前に絵コンテがあるのが当たり前なんですよ。大ヒットしている『パラサイト』とかも、全部コンテやカット割ができている。でも僕は、スタッフとどうしても共有しなきゃいけないカット……たとえばクルマがクラッシュしたりだとか、準備が大変なところは用意するんですけど、それ以外はフラットにいきます。俳優さんに演じてもらって、決めていく感覚に近いんじゃないかな。
つくりかけたら、「完成させる」ことが大事。
松隈:僕、白石監督の『凶悪』を拝見して、カメラの角度にものすごくこだわっているなと感じました。だから、もしかしたら緻密に「こういう絵が撮りたい」って考えているのかなって思ったんです。その場でちゃんと見て、決められているということですよね?
白石:それもありますし、決めないで入るんですけど、カメラを置く以上、なにかを決めていくわけじゃないですか。その時に、対象の俳優に逃げ道を与えるか、逃げ道を与えないか。
松隈:それは空白のような?
白石:空白に近いかもしれないですね。カメラに対して、芝居に対しての余白をもたせるのか。あとは緊張感をどれだけつくるのかとか、それでカメラの置き位置は決めていきます。
松隈:なるほど!どうやって撮っているんだろうってすごく思っていたんですよ。決めちゃうと俳優さんのよさが出ないんじゃないかなと思っていたので。
白石:俳優さんの性格にもよると思うんです。決めてもらったほうが力を出せる人もいるでしょうし、それはケースバイケースです。でも基本的には「次はなにやるんだろう?」っていう緊張感はもたせておくようにはしてます。
松隈:すごく似ている感じがします。超マニアックな話になっちゃうんですけど、ドラムのタイコの「トン」って音を拾う時に、教科書に書いてある角度っていうのがあるんですけど、僕はそれが嫌いで。ドラマーのその日の体調とかスティックの素材とか気温とかで、ドラムはいちばん音が変わる。だからドラマーがウォーミングアップして何回か叩いてから、エンジニアに自由な角度で音を拾いなさいと言うんですよ。じゃないと個性が出ないので。カメラって僕らにとってのマイクなので、録り方で音が全然違うじゃないですか。それをその場で全部考えますね。
白石:作曲をする時は? さっき300曲を1年でつくったと言っていましたが、いまに至るまで数えきれない曲をつくってきたわけじゃないですか。
松隈:そうですね、いま700~800曲くらいだと思うんですけど、世に出ていないものも含めると、多分1000、2000曲は全然あると思いますね。
白石:……なにで発想しているんですか?
松隈:降りてくるとか、トイレで浮かぶ人とか結構いるんですけど、僕は「つくる!」って決めて、つくってます(笑)。「今日は2曲つくる!」って絞り出して。天才じゃないのでポンポン出たりはしないので、ギター持って「こういうコードでつくろう」って決めるとか。「いいのができない……クシャクシャ、ポイッ」というのはやらないようにしてますね。つくりかけたらそれはデモとして完成させる。はい1個できた、はい次、と。そうすると上手になっていくので、技術が大事だなって。
白石:ちゃんと完成させるんですね。
松隈:はい、完成させるのはすごく大事ですね。へぼい曲でも。
白石:僕も20代の頃に脚本を書いていて。2時間分の脚本ってすごく時間がかかるんですよ。途中でやめちゃって、また新しいの……って。書いている最中って新しいのが浮かぶんですよ。これはいまだにありますけど、でも最後まで書ききるっていうのが大事だよっていうのは、30歳越えてから納得しましたね。
松隈:そうですよね。2時間の映画だったらどれくらいかかるんですか?
白石:ある程度、頭の中にできていれば1週間くらいで書けちゃいますけど、もう本当にハマったら1カ月、2カ月……。何年もかかる人もいっぱいいます。
松隈:そうですよね。僕はもう、2時間っす!
白石:(笑)。翌日聴いて、「違うな」ってことにはならないんですか?
松隈:それはなくて。「カッケェ!!」とは思いますけど(笑)。「戻らない!」って決めてる系です。
白石:すごい。僕は見直してみて、意地汚く細かく直してますよ(笑)。語尾を直したりとか、そんなことやってもほぼ意味ないのに。演出している時は全然違うんです。脚本になるとそういう性格になっちゃうんです。人格がちょっと違う感があります。
松隈:でも映画監督とか脚本家の方はたくさんの人に共有しないといけないから、最初にかっちりしないと、後から変わったりしたら意味がなくなる、というところがあると思うんですね。
白石:そうですね。根本的なところは変えないようにしてますけどね。
松隈:僕の場合は歌を録る日まで変えて大丈夫なので。レコーディング当日でもバンバン変えていいので、ざっくりつくっていたほうがどんどん進化していく感じ。デモは割とラフにつくっていますね。
白石:それで言うと、カチッと完成している脚本よりは、わりと隙間がある脚本のほうが、演出していて楽しいというのはあります。
松隈:あぁ、そうですよね。脚本家っていう考え方と監督っていう考え方とが分かれているんでしょうね。
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March 25, 2020 at 10:00AM
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