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大友良英が『いだてん』音楽で伝える「敗者がいて歴史ができる」 - CINRA.NET(シンラドットネット)

オリンピックと日本の近代化を扱ってきた『大河ドラマ「いだてん」』もいよいよ完結間近。日本初のオリンピック日本代表、金栗四三(かなくり しそう)から始まり、1964年の『東京オリンピック』誘致の立役者である田畑政治(たばた まさじ)へと主役をバトンタッチして進んできた1年間は、スポーツのみならず戦争や政治、さらには落語の世界から見た近代史をテーマに含み入れ、時代が大きく揺れるいまだからこそ見られるべき物語へと拡張してきた。

CINRA.NETでは、その音楽を担当した大友良英に7月のサントラ後編のリリースで1度インタビューをしているが、11月にリリースされたばかりの最後のサントラ「完結編」について、あらためて話を聞く機会を得た。たった約4か月のあいだに芸術文化と政治の関係はめまぐるしく変わったが、大友はこの急激な状況の変化をどのように受け止めているのだろうか? また、この変化は『いだてん』後半のなかで描かれている、風雲急を告げる時代の変遷とも無縁ではない。

ある種の極限状況の中で、人って理屈でなく動いてしまう生きものだと思うんですよ。

―大友さんには7月にもインタビューさせていただいて(参考:大友良英が『いだてん』に感じた、今の時代に放送される必然性) 、『いだてん』が扱っている近代や戦争の問題をうかがったのですが、この数か月で『いだてん』の時代を笑うに笑えない状況というか……。

大友:ものすごい勢いで世間が変わっちゃったよね。もう言論統制が始まってますから、僕は余計なことはなにもいわないですよ(笑)

大友良英(おおとも よしひで)<br>1959年横浜生れ。10代を福島市で過ごす。インディペンデントに即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がける。近年は障害のある子どもたちとの音楽ワークショップや一般参加型のプロジェクトにも力をいれる。2012年、東日本大震災を受け福島で様々な領域で活動をする人々とともにプロジェクトプロジェクト「FUKUSHIMA!」の活動で「芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門」を受賞、2013年には『あまちゃん』の音楽他多岐にわたる活動で「東京ドラマアウォード特別賞」「レコード大賞作曲賞」他数多くの賞を受賞している。
大友良英(おおとも よしひで)
1959年横浜生れ。10代を福島市で過ごす。インディペンデントに即興演奏やノイズ的な作品からポップスに至るまで多種多様な音楽をつくり続け、映画音楽家としても数多くの映像作品の音楽を手がける。近年は障害のある子どもたちとの音楽ワークショップや一般参加型のプロジェクトにも力をいれる。2012年、東日本大震災を受け福島で様々な領域で活動をする人々とともにプロジェクトプロジェクト「FUKUSHIMA!」の活動で「芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門」を受賞、2013年には『あまちゃん』の音楽他多岐にわたる活動で「東京ドラマアウォード特別賞」「レコード大賞作曲賞」他数多くの賞を受賞している。

―その前回の取材がまさに最後のレコーディング直前というタイミングで、序盤で使っていた三味線なんかをあえてラストでも使うかも、と話されてましたが、実際にはかなりオーケストラ的で、「『いだてん』だよ! 全員集合」という感じが強かったです。

大友:そう聴いていただけたなら嬉しいです。ドラマのストーリー通りなんですけど、最初は金栗四三さん(中村勘九郎)や嘉納治五郎さん(役所広司)みたいな一部の人だけが「オリンピック、オリンピック!」と騒いでいるインディーズ感から始まりましたよね。それがどんどん大きくなって、特に1964年の『東京オリンピック』は、田畑政治(阿部サダヲ)という個人ではどうにもならない規模のものになり、ドラマのスケールも巨大になっていく。それに合わせて音楽もスケールを変えていく必要は感じていたんです。端的にいえば大編成の曲が増えてくる。

前半でも大人数の曲はあるけれど、ハーモニー的なアプローチは少なめ、シンプルで野蛮な感じを出しつつ、太鼓をみんなでどんどこ叩くアンサンブルだったのが、後半では楽器も増えオーケストレーションも複雑になりモダンになっていくわけです。しかし、その変化は単なる洗練ではなくて、若くてがむしゃらさだけで突っ走ってきた登場人物たちが、年をとってだんだん自由が利かなくなっていったり、様々なことで挫折してく姿も描いています。実際田畑は、どんどん自由を奪われていくわけでしょう。

―政治家の策略で東京五輪の事務総長を辞職させられましたからね。それから金栗もよぼよぼのおじいちゃんになって。

大友:ただただ楽しく、痛快なだけじゃ通用しなくなるんです。1人の武将が生まれて死ぬまでを描く従来の大河ドラマ的な音楽に近づいていく部分もありますが、それでも序盤の精神を継ぐような楽曲も意識して作っているんですよ。それが“東洋の魔女”。チュートリアル徳井義実さん演じる女子バレーボール監督の大松博文や選手たちのテーマは、サントラ前編の“富久マラソン”に似た感じで三味線と太鼓を多用して、時代が変わっても必ずいる、熱意を持っている若い人たちを象徴させてます。

―たしかに女子バレーボール日本代表のシーンは、ド直球にスポ根です。

大友:最初の頃の金栗さんに似てるんですよ。でも、東京五輪ではそれを女性たちがやってるところに時代の変化があるわけです。そういう風に、初期からのマインドをかたちを変えて引き継ぐものがありつつも、全体としては複雑になっていくのが『いだてん』の後半の音楽なんです。

―前半から引き継がれる1曲というと、前編に収録された“スタジアム”も印象的です。金栗の弟子で、のちに満州に兵士として渡る小松勝(仲野太賀)のラストシーンで流れるのもこの曲でした。

大友:“スタジアム”はオリンピックを夢見た人たち共通のテーマなんですよね。小松勝は敗戦を満州で迎えて日本に帰れなくなっちゃうんだけど、古今亭志ん生(ビートたけし)の落語『富久』を聞いて思わず走り出しちゃうところにもこの音楽が使われました。

―長屋に住む主人公・久蔵が火事場に走ってかけつけるシーンのある噺ですね。『いだてん』では、そこに長距離マラソンの要素が加わっていました。

大友:小松勝はマラソン選手だから、その落語の素晴らしさに興奮して思わず飛び出しちゃうんですよね。そして満州に進駐していたソ連軍に銃殺されてしまう。“スタジアム”は最初から戦争とオリンピックの両方のシチュエーションで使える曲として考えていて、うしろでずっと流れているスネアドラムは軍隊のマーチングのイメージも込めている。だからといって、それは「戦争がダメで、平和が正しい」ってことを単純にいいたいわけじゃないんです。ある種の極限状況の中で、人って理屈でなく動いてしまう生きものだと思うんですよ。それは言葉で説明しきれるものではない、だからこそ音楽はその理屈にならない部分に使われるものであってほしいと思っていました。だからディレクター陣が、あのシーンで“スタジアム”を使ってくれたのは嬉しかったですね。

大友良英

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December 05, 2019 at 10:01AM
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