こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回ご紹介するのは、韓国の伝統料理の一つ、「参鶏湯(サムゲタン、以下参鶏湯)」。韓国では夏バテ防止のために食べられる料理として有名ですが、体の芯から温まるスープは日本の寒い季節にもぴったり! そこで、スーパーで手に入る身近な食材を使って、家でも簡単に作れる参鶏湯風スープのレシピをお届けします。
本来は丸鶏やもち米を煮込んで作る参鶏湯ですが、このレシピでは手羽元を使います。あとは、長ねぎ、しょうが、にんにくなどの香味野菜と、白米+切り餅。そして、本場の参鶏湯の特徴の一つでもある漢方食材は、味わいの似ているりんごやごぼうで代用していきます。
さらに、鶏肉をやわらかくし、うま味とジューシーさを余すことなく引き出す、とっておきの裏技もご紹介しますよ。
では、さっそく作ってみましょう!
参鶏湯風スープ
材料(4人分)
- 手羽元……8本(約500g)
- むき甘栗……4~5個(あれば)
【スープ材料】
- 水……1.5L(※手羽元がかぶる程度)
- 長ねぎの緑の部分……2本分
- しょうが……厚切り2枚
- にんにく……2かけ
- 玉ねぎ……1/2個(100g)
- 皮付きりんご……1/8個(30g)(あれば)
- ごぼう……10cm(20g)
- 白米(洗っていないもの)……大さじ3
- 切り餅……1~2個
- 塩……小さじ1〜
- お好みで、ブラックペッパー、糸唐辛子、刻んだ小ねぎなど……各適宜
一見するとスープの材料が多いようにも見えますが、実は参鶏湯のスープというのは意外とシンプル。それぞれご紹介していきます。
ベース食材
スープを白く濁らせてとろみをつけるのに欠かせない白米と切り餅、そして味の決め手となる塩。
香味食材
鶏肉の臭みを取りつつ風味を良くする、長ねぎ、しょうが、にんにくなどの香味野菜。ごぼうはなくてもかまいませんが、風味が良く、本場韓国の参鶏湯で使う高麗人参に見た目も似ているため、入れると味も雰囲気も増すのでおすすめです(そのまま具として食べても美味しいです)。
甘み出し食材
最後に、いい仕事をしてくれる甘み出しの食材。煮込むと甘くトロトロになる玉ねぎに、漢方食材のナツメに風味が似ている皮付きのりんご。そして、コンビニやスーパーで手軽に買えるむき甘栗も、あれば最後に加えるとホクホク甘くて美味しいです。
これら3つは、スープに入れるとフルーティーな甘みやまろやかさが加わり、より深みのある本格的な味わいに仕上がります。
作り方① 鶏肉の下ごしらえ
さて、早くもここでとっておきの裏技「ブライニング(塩水漬け)調理法」の登場です!
鶏肉からだしを取り、やわらかくなるまで煮込む参鶏湯ですが、煮込み時間が長いと鶏肉がパサパサになり、味が抜けてしまうことも。そこで今回は、水と砂糖と塩を混ぜた「ブライン液」にあらかじめ鶏肉を漬けておきます。
塩水に漬けることで、鶏肉に含まれるたんぱく質の性質が変化し、加熱してもしっとりジューシーな食感を保つことができるようになります。また、砂糖を加えることでまろやかな味わいになり、うま味も増します。
とっておきといいつつ、ブライニング調理法のやり方はとても簡単。
まずは手羽元をフォークでまんべんなく刺します。
そして、ブライン液が入ったビニール袋の中に手羽元を入れて空気を抜き、15〜30分ほど置くだけ!
別名「魔法の水」とも呼ばれるブライン液は、鶏肉をやわらかくジューシーに仕上げてくれるだけでなく、臭みを取る効果もあるため、鶏肉を煮込む際に臭いが部屋についてしまうのを抑えることができます。
なにより、漬け込み時間が短くても、ブライン液を使わずに作る時と比べて鶏肉がプリッとジューシーになるので、参鶏湯を作る場合にもとてもおすすめです。
ブライン液に漬けておいた手羽元(軽く汁気を切ってくださいね)を、スープ材料と一緒に火にかけていきます。
※残ったブライン液は廃棄してください。
作り方② 煮る
それではいよいよ、煮込んでいきましょう!
1. むき甘栗以外の材料をすべて鍋に入れたら、ふたはせずに火をつけます。まずは強火にかけて、ブライン液では取れない鶏肉の臭みのもとをしっかり取り除いていきます。
2. 煮立ってからしばらくすると、こんもりとアクが!
このアクが臭みのもとなので、だいたい出切ったところで全部取り除きます。
3. あとは、中弱火(しっかりフツフツするくらいの火加減)でまずは15分ほど煮ます。ここでもアクが出てくるので、気がついたら取り除いてくださいね。
そしてこの煮込む工程では、大切なポイントが3つ。
①ふたはしないで煮る
鶏肉の臭みをしっかり飛ばすために、最初から最後までふたはせずに煮ます。部屋に香味野菜などの匂いがこもるので、換気扇は強めにかけましょう。
②火を弱めすぎない
骨付きの鶏肉をある程度フツフツするくらいの火加減で煮ると、鶏のゼラチン質や脂肪が乳化することでスープが白く濁り、美味しいとろみもついてきます(どちらかというと「弱火でじっくりコトコト」ではなく、「フツフツ」と小さな音がするくらいで煮た方が美味しく仕上がります)。
③時折アクを取り、鍋底から混ぜる
時々お鍋をのぞき、アクがあれば取るようにすると、すっきりした味のスープに仕上がります。また、餅が鍋底にくっついて焦げ付くことがあるので、時々おたまなどで鍋底から大きく混ぜるようにしてください。
4. 15分ほどたったところで、むき甘栗を入れてさらに煮ます。この段階で甘栗を入れると、煮崩れせずに甘みもしっかり残ります。
5. 火にかけてから30分もすると、手羽元もそろそろやわらかくなってきます。食べる時に口当たりが気になるしょうがや長ねぎの緑の部分は、この段階で取り出してしまいましょう。
あとは手羽元がお好きなやわらかさになるまで煮ればできあがり。味をみて、仕上げにお好みの塩加減に調えてください。
できました!
お好みでたっぷりのブラックペッパーと糸唐辛子、刻んだ小ねぎなどを添えて。
今回は、韓国の土鍋(トゥッペギ)に盛り付けて、さらに直火で温めてみました。とろみのある白濁したスープがグツグツ煮立って、見るからに美味しそうな仕上がりに。
鶏肉はやわらかく、しっとりジューシー。ブライン液に漬けておいたので、煮込んでいてもプリッとした食感がしっかり残っています。鶏肉自体に味もついており、うま味がぎゅっと凝縮された味わいを楽しむことができます。
ほぐした鶏肉に、ホクホクの甘栗。奥にはフルーティーなやさしい甘さが心地良いりんごと、香りの良いごぼうも。
トロトロになった白米と餅に濃厚なスープがからんで、最高に美味しい!
おすすめの食べ方
このままでも美味しい参鶏湯風スープですが、さらに美味しい組み合わせをご紹介します!
まずおすすめは、もち麦などの雑穀ごはん(分量外)をスープにひたして一緒に食べること。
普通の白米でももちろん合うのですが、雑穀の滋味深い味わいが濃厚スープと相性抜群で、より美味しくいただけると思います。かみしめるたび、雑穀ごはんの香ばしさとスープのうま味が口いっぱいに広がって、幸せな気持ちになります。
そしてさらに、たっぷりの白髪ねぎ(分量外)をこれでもかと加えて、小ねぎとの「Wねぎ使い」でいただくのもおすすめです。
くったりと火が通りつつシャキシャキ食感も残る小ねぎ&白髪ねぎの組み合わせがたまりません……!
その他、うどんなどを入れて食べても美味しいので、ぜひいろいろ試してみてくださいね。
自分好みに仕上げて楽しもう
基本はただ煮込むだけの参鶏湯ですが、本場韓国と同様、最後は食卓で自分好みの味わいに仕上げられるのもまた魅力の一つ。特に今回は手羽元をあらかじめブライン液に漬けているので、漬け汁の味もスープに溶け出しています。まずは薄めの塩加減にしておいて、食べる時に塩やブラックペッパーで好みの味に調節していただくのがいいかもしれません。
また、鶏肉のやわらかさを堪能するならやはり30分くらいは煮込んだ方が美味しいですが、40分ほど煮込むとさらに軟骨までやわらかくなります。ただ、煮込み時間が45分を過ぎると、鶏肉の味が徐々に抜けやすくなるので、お好みの加減で火を止めるようにしてくださいね。
栄養満点で、最後の一滴まで余すところなく美味しくいただける参鶏湯風スープ。一度食べたらやみつきになるこの味わい、ぜひお試しください!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。
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