ボーナスと退職金を巡って正社員との格差解消を訴えた非正規労働者の訴えは13日、最高裁に退けられた。「同じ仕事内容なのになぜ」。問い続けた疑問への答えは「(不支給は)不合理とは言えない」。原告の女性たちから「国が『同一労働同一賃金』を進める中、どうして司法がブレーキをかけるのか」と怒りの声が上がった。(山田雄之、山下葉月)
◆非正規労働者2100万人待ち望む
「私の判決を2100万人の非正規労働者が待ち望んでくれていたのに、奈落の底に突き落とされた気分です」
東京メトロの子会社「メトロコマース」で売店の契約社員として10年7カ月働いてきた原告の疋田節子さん(70)は、東京都内で開いた記者会見で声を詰まらせた。
働き始めたのはシングルマザーになった2004年夏。時給1000~1050円で1日8時間、週5、6日働いた。勤務開始の30分前には売店に行き、新聞や雑誌をラックに並べた。通勤・通学ラッシュが過ぎれば、各商品の売れ行きをチェックし、卸売業者に発注。売上金の管理もした。
◆「内容同じ、なんでこんなに違う」
「仕事内容は全く同じなのに、なんでこんなに違うのだろう」。働くにつれ、疑問が湧いてきた。
同じ制服を着て、同じ業務をしている正社員ともボーナスの額は大きく異なる。忌引休暇や食事補助券もない。けがで4カ月休職した時、正社員なら4カ月分出る休業手当が1カ月分だけ。親にお金を借りて子どもと自分の生活を支えた。
経営幹部に待遇改善を訴えても「そんなにお金が欲しいなら、兼業でもしてください」と返された。
◆自宅ローンは仕事3つをかけ持ちしのぐ
65歳になった15年3月、定年退職。退職金が支払われないことは分かっていたが、なぜ正社員とここまで待遇差があるのかと憤りが込み上げてきた。退職後も残った自宅のローンは別の仕事を3つ掛け持ちしてしのいだ。
14年5月の提訴から6年5カ月で迎えた最高裁判決。「本当に悲しくて、何を言ったらいいか分からない」と涙交じりに語った。
一方、大阪医科薬科大にボーナスの支給を求めていた大阪府の50代の女性も判決後の会見で、「本当に悔しい」と言葉を絞り出した。
◆フルタイムで教授らの秘書業務
女性は13年1月、薬理学研究室の教授らの秘書となった。フルタイムの勤務だったが、採用形態はアルバイトだった。
隣の研究室には正社員の秘書がいたが、仕事量は自身の方が多いとの自負があった。だが、自分にはボーナスや病欠手当はない。多忙のあまり15年3月、適応障害と診断され休職。揚げ句の果てに、雇い止めに遭った。
さまざまな手当を求めて提訴したところ、二審・大阪高裁は「正社員の6割未満のボーナス支給は不合理」と認めたが、今回の最高裁は一転、不支給を認めた。
◆「何のための労働契約法なのか」
女性は「何のための労働契約法二〇条なのか。国が格差をなくそうと法律を作っても、裁判所の判断は追い付いてない」と判決を批判した。
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