新国立競技場に近い、東京・千駄ケ谷の二期会会館。練習室で妻屋さんが「まだ公演ができない団体が多いが、誰かが踏み出さないといけない。このコンサートを大きな一歩にする」と力強く語った。
「希望よ、来たれ」と題したコンサートの舞台はオペラの殿堂として知られる東京・上野の東京文化会館大ホール(約2300席)。客席の1~3列目を空け、4列目以降も客同士の間隔を確保できるよう入場者数を半分以下に抑えて開くことにした。
妻屋さんは大阪で生まれ、4歳から18歳まで松江市で暮らした。松江北高の合唱部に所属し、島根県合唱連盟理事長の勝部俊行氏、元理事長の故・森山俊雄氏から指導を受けた。高い声が出せず悩んだこともあったが、森山氏から「日本人でバスの声は非常に貴重なんだ」と強く背中を押され、声楽家の道を志した。
東京芸術大大学院在学中に、オーディションに合格してデビュー。怒号が飛び交うほど真剣に向き合う出演者らの姿に刺激を受け、小さい役を重ねながら場数を踏んだ。
1992年にイタリア・ミラノへ留学し、オペラの本場で挫折を味わいながらも「世界中で歌いたい」と夢を追い、ドイツのライプツィヒ歌劇場や国民劇場の専属歌手として活躍した。2011年以降は徐々に活動の軸足を日本に移した。
新型コロナはオペラ業界を直撃した。感染が拡大した3月以降、出演予定だった7作品の公演が中止や延期に。現在も、世界各地の劇場で本格的に客を入れて公演を再開したところはなく、今回のコンサートは関係者にとって「試金石」となる。
この間、音楽家による動画のインターネット配信などが広がったが「代え難い高揚感が生歌にはある。公演ができなければ若者の離職にもつながる。業界全体を衰退させてはいけない」。久々の舞台で磨き上げた歌声を届け、社会に音楽の力で光をともす。
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June 30, 2020 at 09:16AM
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山陰中央新報社|松江北高OB妻屋さん出演 東京で観客入りオペラ再開 - 山陰中央新報
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